【会計論点】受注制作取引について監査法人が検討すべきこと。「受注損失引当金、その金額で大丈夫?」

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こんにちは、メーカーの監査に従事している会計士そらです!

メーカーに限らずソフトウェア業界においてもよく論点として挙げられるのが受注制作取引ですよね。

受注制作取引は一般的な取引とは性質が異なるため、会社のみならず監査法人としても留意が必要なのですが、検証をしにくい論点でもあります。

そこで今回は、若手会計士に向けて受注制作取引に関する論点と検証の際に留意すべき点を紹介しようと思います!

※この記事における受注制作取引とは、工事契約に関する会計基準が適用される取引を想定しており、委任契約やSES契約等を想定しているものではありません。

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受注制作取引ってナンだ?

そもそもの前提ではありますが、大まかに言うと受注制作取引とはある特定のお客様の要望に合わせて成果物を作成し、納品する取引のことを指します。

いわゆるオーダーメイドですね!

受注制作取引じゃない一般的な取引と何が違うのかというと、一般的な取引というのは標準製品やパッケージと呼ばれる基本モデルの販売物があって、必要に応じて追加設備やオプション機能を上乗せする販売形態の事を指します。

これらはすでに用意されている選択肢からお客様が選ぶという点で、受注制作取引とは異なります。

これに対して受注制作取引は、先ほど紹介したようにオーダーメイドなので、「おたくのカタログには書いてないけどうちの機械やシステムに合わせて、ちょっと特別仕様にしてよ」とか、「こんな商品作れる?」といったようなお客様の要望を受けて一点ものを制作します。

なので、会社としても原価がいくらかかるのかを見積りづらい取引といえます。

検収に至るまでのハードルが高く、長期案件になりやすい

受注制作取引の特徴として、お客様の要望に合わせたものを制作しなければならないため、一度納品しても検収に至るまでのハードルが高く、長期案件になりやすいことが挙げられます。

例えば会社のカタログに書いてある商品であれば、その商品の機能・仕様が決まっていますので、正常に機能しさえすればお客様は納得してくれます。

これに対して受注制作取引の場合は、お客様の要望に合致した成果物を納品しないと「あれ、何か違くない?」と言われ、その不満を解消するべく追加作業が発生し、そのあとに再度お客様のチェックを受けなくてはなりません。

これだけ見てもダルそうな取引だなぁって思いますよね。

実際の現場でも、受注の段階でお客様と機能・仕様について合意を得たうえで制作を開始したにも関わらず、成果物がお客様のイメージと異なり、当初想定していない追加作業が次々と発生することがよくあります。

そうなるとどうしても案件が長期化してしまい、予定月から数か月遅れて売上が計上されるなんてことになってしまうんです…

監査上は受注損失引当金の網羅性を検討する必要がある!

会社にとっても悩みのタネになりがちな受注制作取引ですが、監査法人としては受注損失引当金の網羅性を検討することが何よりも大事です!

普通は原価よりも高く販売するため、受注損失引当金の計上は不要のはず。

しかしながら、受注制作取引においては受注時に見積もった原価に利益を上乗せしたとしても、当初想定していなかった追加作業等が発生するため、結果として赤字になる案件が少なくないんです。

もちろん、追加作業分についてはキチンとお金をもらうのが理想ですが、買い手の交渉力が強い場合や、今後の取引関係を良好にしたい場合にはそうもいきませんよね。

その結果、受注損失引当金という損失の見込み計上が必要になるということです。

ここで話を監査の視点に戻すと、受注制作取引を行っている会社は、今後想定される追加費用を見積り、受注損失引当金の計上要否判定および計上金額の算定を行っていることがほとんどです。

なので私たちとしては、受注制作取引の案件については以下に例示した5つくらいの視点を持って受注損失引当金の網羅性に問題がないかを検討することになります。

①検収をもらえていない理由と、追加作業の内容

②追加作業の実現可能性

③追加作業の内容と追加見積原価の内訳の整合性

④追加見積原価の算定に見込んでいない懸念事項

⑤追加報酬の有無、失注につながる可能性の有無

これら一つ一つについて納得感のあるストーリーを自分の中で組み立てることができれば、網羅性について問題がないと判断して良いんじゃないでしょうか。

会社の計算結果や現状の金額規模だけ見れば良い訳ではない

監査を行ううえで留意してほしい点として、受注損失引当金の検討というのは会社の計算結果や現状の金額規模だけ見れば良い訳ではないということです。

追加原価の発生可能性はある意味では青天井なので、「本当にその引当金額で十分なのか」を検討しないことには会社の計上金額が正しいかどうかなんて分からないですよね。

今は数十万円の案件でも、追加作業の内容によっては数百万円の原価が発生することになるかも知れない。

所詮は見積り項目なので100%正解なんてものはないんですが、ただ会社の資料をなぞってオシマイ!なんてことがないようにしましょうね!

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