公認会計士なら知っておきたいM&Aのプロセス!バリュエーションやデューデリジェンスって何のこと?

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こんにちは、受験時代は組織再編が得意だった(?)会計士そらです!

監査法人に在籍して3年くらい経つと、同期の中には「あーFAS行きたいなー!」っていう意識高い人が出てきます。

FASっていうのはファイナンシャルアドバイザリーサービスの略で、簡単に言うとM&A(Merger & Agreement)の時に株価算定をしたり、買収スキームを考えたり、はたまた事業再生してみたりと、会計をツールとしたコンサルを行う部門や会社のことを言います。

大手監査法人であるBIG4にはグループ会社にアドバイザリー会社があるので、監査法人で数年間経験を積んだ後、そちらへ転籍する人がちょこちょこいるみたいですね。

そして、FASでM&Aに携わると避けて通れないのがDDやバリュエーションといったような特殊業務。

公認会計士の独占業務である財務諸表監査をずっと行うのも一つの道ですが、やっぱりM&Aって会計サービスにおける花形みたいなところがあるので、「やりたい!」っていう人は潜在的に多いと思うんですよね。

そこで今回は意外と知らない、M&Aがどのように行われるのかについて簡単に紹介していこうと思います!

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M&Aプロセスのサマリ

結論からお話すると、M&Aは以下の図のようなプロセスに基づいて実行されます。

正直これだけ見ても分からないかと思いますので、一つ一つ解説していきますね!

① 買収戦略の立案

当たり前ですが、M&Aは企業戦略を実現するために行うものであり、M&Aは手段でしかありません。

そのため、M&Aを行うにあたって、どういった目的を達成するためにM&Aを行うのかをハッキリさせる必要があります。

例えば、新規サービスを開始しようとした時、0から急成長を遂げるのはとても難しいことが想定されますよね。

そこでM&Aという手法を用いることで、立ち上げようとしているサービスに関連する会社を取り込み、事業をいきなり拡大することが可能になります。

そのため、目的を達成するために最も効果的なM&Aとは何かを考え、戦略を明確に立案することで、買収企業の選定という次のステップにつながることになります。

参考までに、買収戦略の例としては以下のようなものが挙げられます。
・既存事業の規模拡大
・新市場開拓
・製品ラインアップの拡充
・バリューチェーン拡大

② 買収企業の選定

買収戦略が決まったら、M&Aの目的とされる効果を実現できる会社を買収対象として選定する必要があります。

これは、金融機関等から紹介を受けることもあれば、買収可能性が高くてM&Aの目的と整合していると思われる企業を自社でリストアップすることもあります。

買収企業を選定するうえでポイントとなる事項は以下のものです。
・業種
・エリア
・会社規模
・予算額

(参考)金融機関などからの持込案件の場合

上述のように、M&Aは金融機関等の外部から案件を持ち込まれることもあります。

その場合、最初はノンネーム・シートという形式で対象企業の概要が知らされることになります。

ノンネーム・シートを基に会社が検討を行い有望な案件と判断した場合には、秘密保持契約(Non-disclosure agreement。NDAと呼ばれる。)を締結して、より詳細な情報を入手します。

持込案件で特に特徴的なのは、買収対象企業は買い手からアプロ―チを受ける前から売る気があるということ。

そのため、次で紹介するファイナンシャル・アドバイザー(以下、FA)とすでに契約しており、そのFAがあらかじめ買収対象企業の情報をまとめています。

秘密保持契約を締結することでこのFAから詳細な情報が提供されるのですが、この情報一式のことをインフォメーション・メモランダムと呼びます。

インフォメーションメモランダムには、事業概要や、財務情報の推移など、より詳細な情報が含まれているのでこれらを見たうえでM&Aの目的と合致しているかを検討することになります。

③ ファイナンシャル・アドバイザーの選定

持込案件ではない場合、買収企業リストを作成して買収候補を選定していくことと同時に、FAを選定する必要があります。

FAは銀行、証券会社、コンサルなどに在籍しているスペシャリストのことを指しますが、会社が行おうとしているM&Aの規模や業界、報酬の多寡によってどのFAと契約するかを選ばなくてはなりません。

このFAは何をする人かというと、M&Aを実行するうえでのパートナーとして、企業の代わりに買収価格交渉の場で戦ってくれたり、買収スキームをアドバイスしてくれたりとM&Aの局面における何でも屋としてサポートしてくれます。(だから慎重に選ぶ必要がある訳ですね。)

④ 買収対象企業へのアプローチと、初期段階での分析

FAが決まり、買収対象企業もあらかた決まったら、買収対象企業に対して具体的な買収交渉のアプローチをかける必要があります。

持込案件の場合はそもそも金融機関等が仲介してくれますが、そうでない場合は自らアプローチを仕掛けることもあれば、金融機関等の力を借りもことになります。

ここで買収対象企業が前向きな姿勢を見せてくれる場合には、基礎的な情報をもらい、この時点で初期段階の財務分析を行います。

買収対象企業が上場企業であれば、基礎的な情報をもらうまでもなく有価証券報告書などの公開情報をもとに分析を行うことができますが、非上場企業であれば調査会社の報告書、仲介会社や金融機関が保有している情報を利用することなります。

⑤ バリュエーション

基礎的な情報を基にした初期分析に基づき、買収金額を決めるバリュエーション(価値算定)行います。

これを買収企業が行うと「不当に安く算定してるんじゃないか?」と客観性に疑いを持たれてしまうため、通常はFASの部門を持つ監査法人やアドバイザリー会社、会計事務所などといった外部機関を用います。

そして実際の価値算定はかなり煩雑なんですが、主な算定方法としては以下の3つのアプローチがあります。

■マーケット・アプローチ(市場株価法、類似会社比較法など)
■インカム・アプローチ(DCF法、収益還元法など)
■コスト・アプローチ(修正簿価純正産法など)

企業の価値を「◯円です」といった感じでピンポイントで算定することは実務上不可能なので、これら3つのアプローチにもどづくバリュエーション結果を並べて、重なり合う算定結果から「●円~●円です」というレンジ(幅)を設けて決定することになります

⑥ 買収スキームの検討

企業価値のレンジが決まったら、FAによるサポートのもと買収スキームを決定する必要があります。

M&Aのなかでも、合併、株式交換、新株引受など、さまざまな手法が考えられますが、買収により買収対象企業の既存顧客や従業員が受ける印象、税務上のメリットなども考慮に入れて考えなくてはなりません。

そのため、FAや顧問税理士などの専門家による助言を受けながら、最適なスキームを決定する必要があるということですね。

⑦ 算定結果に基づく交渉

バリュエーション、買収スキームの検討を終えたら、買収意向を表明し、買収対象企業と交渉を行います。

交渉に臨むにあたって、バリュエーションにより算定されたレンジをもとに買収金額の上限・下限を慎重に設定する必要があります。

買収企業としては予算を上限とするものの、可能な限り安く買いたい気持ちがありますよね。

その一方で、売り手としては自分の会社を不当に安く買おうとする相手に売りたいなんて思わない訳です。

M&Aはとてもデリケートな話なので、交渉の過程で「この会社とは意地でも取引しない」と一方が思ってしまえば破談(ブレイク)しかねません。

また、金融機関等による持込案件のように、売り手が積極的にM&Aを求めている場合には実質的に相見積り状態であることが少なくありません。

この場合、売り手としては少しでも高く買ってくれる会社を候補として残すことになる訳ですから、買い手はバリュエーションの結果を前提としつつも、買収によるシナジーも見込んだ買収価格を提示することになると考えられます。

それでも納得してもらえないようであれば買い手は諦めることになりますが、M&Aに積極的な売り手としてはチャンスを逃すことになってしまいますよね。

これらを踏まえると、買収金額の上限・下限を設定することは、お互いの妥協点を見つけるために必要なことだと言えます。

⑧ 基本合意書の取り交わし

交渉を経て、基本的な取引条件や買収価格等について合意に至った時点で、基本合意書(LOI=Letter of intentもしくはMOU=Memorandum of understandingとも呼ばれる。)を取り交わします。

この基本合意書に法的拘束力はありませんが、契約上の重要な条件や、独占交渉権を得ていることについての合意の証ですよね、買い手と売り手の認識を一致させるためにも必要なものとなります。

なお、この基本合意書に具体的な取引条件等を記載する場合、上場企業は証券取引所への適時開示が必要となることには留意が必要ですね。

⑨ デューデリジェンスの実施

基本合意書を取り交わした後、買い手企業は本格的なデューデリジェンス(以下、DD)を実施することになります。

DDの主な種類として以下のものがあります。

・財務DD
・法務DD
・ビジネスDD
・人事DD
・環境DD

これらの目的はいずれも買収対象企業の財務実態の把握、潜在的なリスクの認識、買収企業とのシナジー効果などを分析することにあります。

上記DDの中でも財務DDは監査法人や会計事務所、法務DDは法律事務所、ビジネスDDはコンサル会社といったようにそれぞれについて専門家に依頼をかけることが多いですね。

上述したとおり、DDの目的は買収企業の財務実態や潜在的なリスクを分析することにあるので、DDを実施した結果、それまで認識していなかった事項を検出することがあります。

それが買収企業にとってマイナス要因であれば、基本合意書の取り交わし時点で合意していた買収価額を低下させることになりますし、逆にプラス要因を見つけた場合には買収価格が上乗せされることになります。

➉ 最終契約の取り交わし

これらを経て、すべての条件について合意に至った後、最終契約の取り交わしを行います。

基本合意書の時点では法的拘束力がないことを書きましたが、この最終契約を取り交わすことで、買い手と売り手の双方に取引義務が生じることとなります。

⑪ クロージング

最終契約に基づき、買い手と売り手の義務をそれぞれ履行し、M&Aを完了させることをクロージングといいます。

例えば株式交換であれば、株式の発行により支配権を獲得することで完了しますが、合併の場合には債権者保護手続などが必要となりますよね。

クロージングの内容や期間はM&Aのスキームにより異なりますので、このクロージングも見込んでM&Aのスケジュールを組む必要があります。

M&Aは短期決戦!

M&Aのプロセスをザックリと紹介してきましたが、いかがでしょうか?

会計のプロとして機会があれば携わった方が良いことは間違いありませんが、短期間にガッツリと集中して作業をする必要があるため、合う合わないがあると思ってます。

案件によっては暫く家に帰れないみたいな事も聞きますからね…。

実際に携わるかどうかはともかくとして、クライアントがM&Aを行うことも珍しくないので、会計士の基礎知識として知っておきましょう!

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